研究概要 |
1.麝香の強心作用成分に関する化学的研究 麝香のエキスの水溶性画分から見い出した強心作用(イソプロテレノール効果増強作用)物質musclide-A1,-A2,-Bの効率的不斉合成法の検討を行った。Musclide-A1,-A2,-B以外の類縁体の合成にも応用可能な方法としてアミノ酸を出発物質とし,その不斉をmusclide類の2個の不斉中心の一方に利用し,β-ケトエステル類の縮合による炭素鎖延長,脱エステル,カルボニル基の還元,硫酸エステル化を経て目的物質へ導く方法を考案した。 現在,この経路にそって合成を検討しているが,β-ケトエステル類との縮合および脱エステル化の段階での収率向上が必要であり,種々の方法を検討している。 2.麝香の強心作用成分に関する薬理学的研究 麝香がモルモットやネコの乳頭筋にβ-アドレナリン作動性の陽性変力作用に対して増強作用を示すことを見い出してきた。さらに麝香由来物質として単離同定したmusclide-A1やその2R,5S-ダイアステレオマーがモルモット心室筋から抽出した粗プロティンキナーゼC(PK-C)を活性化することを既に報告した。最近,PK-Cのアイソザイムとして,α,β,γ,δ,ε,ζ型の存在が明らかになり,特に心臓では主にα,β型,脳ではβ,γ型が主に存在する。そこで今回,ラットの心室筋のアイソザイムレベルで,musclide-A1によるPK-C活性化を検討した。粗PK-CをDE-52,ブチルトヨパール,ハイドロオキシアパタイトの三段階のカラムを用いて,比活性を4000倍に上げた。最終カラムからの溶出パターンから,musclide-A1は特にα型のアイソザイムのPK-C活性を上昇することを見い出した。Musclide-A1は心筋個有のPK-Cアイソザイムを活性化することが明らかになった。
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