研究概要 |
1.麝香強心作用成分に関する研究 麝香のエキスの水溶性画分から見いだした強心作用(イソプロテレノール効果増強作用)物質ムスクライド-A_1,-A_2,-Bの効率的不斉合成法の検討を昨年に引き続き行った.昨年度検討したバリン誘導体からウィッティッヒ反応による炭素鎖延長を行なった後,官能基の変換を経る経路によって,ムスクライド-A_2の両エナンチオマーの合成を達成した.さらに続いて,ムスクライド-A_1,-Bの全ての立体異性体をロイシン誘導体から同様の経路によって合成した.その結果,ムスクライド-A_1,-Bの立体構造を訂正する必要のあることが明らかとなった.現在,これら合成品の強心作用(イソプロテレノール効果増強作用)の検討を行なっている. 2.麝香鎮静用成分に関する研究 鎮静作用を示した麝香のエーテルエキスをシリカゲルカラムおよびプレパラティブTLCで分離を行ない,ムスコンの他にコレステロール,デヒドロエピアンドロステロンの存在を認めた.さらに,天然産麝香および飼育麝香からエーテルエキスを作製し,その成分を薄層クロマトグラフおよびガスクロマトグラフによって比較した.その結果,いづれもムスコンをはじめとする前述の成分を含有しており,そのクロマトグラムも類似のパターンを示した.しかし,その含有比には差が見られた.現在,この含有比の差と活性あるいは品質との関連について検討している.
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