研究概要 |
アカネ科及びワク科植物培養細胞より、夫々、イリドイド系モノテルペン配糖体及びプレニルカルコン類高生産植物培養細胞を得、これらの二次代謝産物の生成機構を明らかにするとともに、単離した物質については、発癌プロモーターのTPAによるEBウイルス早期抗原発現の抑制活性を調べた。一方、種々の植物培養細胞を用い、ダイベンゾパラダイオキシンの如何なる誘導体が、如何なる条件下に生物変換を受けうるかを検索中である。ここに得られた知見を以下に列挙する。 1)熱帯アメリカ産アカネ科クチナシ連植物Genipa americanaの培養細胞を選抜し、イリドイド配糖体tarennoside,geniposidic acid,gardenosideを高率で生産する細胞系を得た。この培養細胞は、他の熱帯産クチナシ連植物培養細胞と同様、温帯産のものが生産するgeniposideを全く蓄積しない。 2)上記イリドイド配糖体の抗発癌プロモーション活性はtarennosideが最も強く、植物体内で代謝が進行し、geniposidic acid,geniposide,gardenosideへと進むにつれて、活性は低下する。geniposideの非糖部に当るgenipinは極めて高い抗発癌プロモーション活性を有する。その活性はretinoc acidのそれより更に強く、選択性も高い。 3)クワ培養細胞の生産するchalcomoracin,kuwanon Jなどが,プレニルカルコンの分子間Diels-Alder型閉環反応によって生成することを解明し、そのプレニル部分は、共存するβ-sitosterolとは全く異なる経路で生合成されることを証明した。即ち、メバロン酸はβ-sitosterolに規則正しく取込まれるのに反し、これらのプレニルカルコン類には全く取込まれない。酢酸はTCA回路を2回以上経由した後、プレニルカルコンのプレニル部分を形成する第一番目の酢酸単位にのみ取込まれる。ロイシンは酢酸にまで分解された後、カルコンのトリアセテート部分にのみ取込まれる。 4)クワ培養細胞に、インドネシア産Artocarpus heterophyllusの未知微量成分artonin Iの想定前駆体artocarpesinを投与して、artonin Iを多量に生産させることによって、その化学構造を決定した。 5)dibenzo-p-dioxinをクワ、クチナシ等の培養細胞に投与し、その変換物質を検索中である。
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