研究概要 |
(1)抗ダンシルFvフラグメントの安定同位体標識および主鎖アミド基の帰属NMRを用いた原子レベルの解析を行うためにはNMRシグナルの部位特異的帰属が必須となる.13種類の^<15>N標識アミノ酸による安定同位体標識Fvフラグメント用いて,主鎖アミド基の帰属を行い,導入した安定同位体標識プローブのうちおよそ80%のアミノ酸残基に関しての帰属が完了した.帰属の戦略としては,^<15>N-^<13>C2重標識Fvフラグメントの^1H,^<13>C,^<15>N3重共鳴測定により帰属の起点を作り,3次元NMRにより得られた帰属をアミノ酸配列上,連鎖的に展開することが効果的であった. さらに,確立した主鎖アミド基の帰属をもとに,適当な安定同位体標識とパルステクニックを併用することで,芳香族アミノ酸側鎖シグナルまで帰属を展開することが可能になった。 2)抗原認識に関与するFvフラグメントのアミノ酸残基の同定 我々は,スピンラベル化抗原を用いた実験より,抗ダンシルFvフラグメントの抗原認識は,可変領域の存在するH1,H3ループとH鎖N末端に囲まれた領域で行われることを明らかにしてきた.さらに原子レベルでの解析を行うため,抗原(DNS-Lys)存在下でのNOE測定を行ったところ,DNS環プロトンシグナルとFvフラグメントにはいくつかの分子間NOEが観測された.さらにDNS-Lys側鎖からの分子間NOEを解析するために,Lys側鎖を^<13>Cで均一標識した抗原アナログを作成し,NOE測定を行った.1)項で得られた帰属を基に測定された分子間NOEを解析したところ,抗原結合部位において抗原から5A以内に存在するアミノ酸残基は,Y96H(H3),Y104H(H3),F27H(H1),V2Hであることが明らかとなった。
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