研究概要 |
抗原結合部位には,両親媒性を有するTrp残基およびTyr残基が豊富に存在していることが知られている.そこで,Trp残基およびTyr残基の主鎖アミド窒素を^<15>N標識したFabフラグメントを用いて,抗原結合部位の同定を行った.主鎖アミド基に由来するNMRシグナルの部位特異的帰属は^<13>C-^<15>N二重標識法により行った.現在までに,二重標識可能な全てのシグナルの帰属を完了している.スピンラベル化抗原アナログであるNP-AmTEMPOを化学合成し,このアナログの添加実験により抗原結合部位の同定を行った.その結果N1G9の抗原結合部位には,H1ループに位置するW33,L3ループに位置するW91,W99が存在していることが明らかとなった.N1G9とC6のそれぞれのTyr残基およびTrp残基に対して同様のスピンラベル添加実験を行った結果,N1G9,C6いずれの場合にも,Y32(L1ループ),W91,Y92,W96(L3ループ),W33(H1ループ)およびH3ループの残基にシグナル強度の減少が観測された.したがって,N1G9およびC6の超可変ループには数多くのアミノ酸変異がおきているにもかかわらず,いずれの抗体においても抗原結合部位は,L1,L3,H1,H3ループで形成される領域であることが判明した.
|