研究概要 |
この2年間に次の遺伝子上にDNA複製開始領域を同定した。ヒトc-myc,ヒトN-myc,ヒトhsp70,マウスp53,マウス免疫グロブリンH鎖(IgH)である。これらのDNA複製開始領域はいずれも転写調節領域(エンハンサー、プロモーター)と重複し、転写と複製の密接な関係を示していた。これらはいずれも自律増殖配列として機能するので本研究目的に沿った形質発現ベクターとしての可能性を示し、現実にその線で実験が成された。更にその必須配列にはタンパク質が複合体形成して結合し複製活性を調節していた。その幾つかを同定あるものはcDNAクローニングを行い、複製必須配列とカップルしたベクター開発を検討している。以下その研究内容を概略する。 c-myc遺伝子上のHindII-PstI(H-P)領域は培養細胞のみならずトランスジェニックマウス個体で自律増殖する。このcore配列にはc-mycタンパク質と複合体形成してMSSPと名ずけたタンパク質が結合する。この2種MSSP-1,-2のcDNAクローニングを行った。MSSPはRNPコンセンサス配列を有し、1本鎖及び2本鎖DNAに塩基配列特異的に結合する。MSSPは転写と複製の調節因子として機能した。hsp70遺伝子転写プロモーターの2カ所にc-mycタンパク質複合体が結合し、そこはDNA複製開始領域のみならずc-mycによる転写調節領域として機能した。この配列に結合するタンパク質としてHSBPのcDNAクローニングを行った。マウスIgH遺伝子のJ-CイントロンはDNA複製開始領域として機能することを明らかにした。この配列には2本鎖のOTF-1が、一本鎖プラス鎖には3種類のタンパク質が結合し、転写と複製の調節をしていた。マウスp53遺伝子最終エキソン下流にDNA複製開始領域が存在し、この配列中にはp53結合配列とDNA折れ曲がり領域が存在し、典型的な複製開始領域構造であった。DNA折れ曲がり領域には3種のタンパク質が結合していた。N-myc遺伝子はエキソン上流1000塩基対の存在した。
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