研究概要 |
[1]新規人工イオノフォアーの開発の一環として、カリックスアレン型のナトリウム及びカリウムイオン選択性人工イオノフォアーの輸送特性を人工平面膜を介したカチオン輸送により詳細に検討し、その有効性を確認した。ナトリウムイオノフォアーとして従来は、モネンシンなどのようなカルボン酸型の天然イオノフォアーが一般的で、プロトンの対向輸送をともなわない中性型のイオノフォアーは知られていなかった。本研究では、人工イオノフォアーとしてはじめて、バリノマイシン型の中性ナトリウムイオノフォアーの開発に成功した。この化合物は、疎水性が極めて高く、容易に脂質二分子膜に取り込まれるため、細胞レベルでの応用研究に使用できる実用的人工イオノフォアーである。また本研究での、ナトリウムイオノフォアーの分子設計の指針より、カリウムイオンに選択的なイオノフォアーの合成にも成功した。今後各種細胞内イオンに対するイオノフォアーの開発へむけ、基本的分子設計の戦略が確立されたものと考える。 [2]Na^+,K^+蛍光プローブの開発は、蛍光変化に対する基本的分子設計の段階から、実用的プローブの合成段階へと進み、現在各種ケイ光色素をナトリウム及びカリウムイオノフォアーへの化学修飾へ展開している。この中で、蛍光エネルギー移動を利用する蛍光プローブが細胞内イオン蛍光プローブとして、最も有効となる事を見い出しており、本研究期間内での実用的プローブの開発が目前となってきている。
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