生体系で利用可能な新規イオノフォア-を開発するため、フェノールとアルデヒドの脱水縮合反応により得られるホスト化合物であるカリックスアレン類のイオン輸送特性を平面膜実験装置によって詳細に検討した。天然型のイオノフォア-としてバリノマイシンやモネンシンが知られているが、人工的な化合物において2分子膜系で選択的なイオノフォア-として機能するイオノフォア-はほんど知られていなかった。本研究では、りん脂質2分子膜中でナトリウムイオンに選択的なキャリアーとして機能するカリックスアレンを開発した。新規人工イオノフォア-のナトリウムイオン輸送速度は、天然型のキャリアーであるモネンシンに比べ約1/4であるが、イオン選択性の極めて高い中性型キャリアーであり、細胞膜を界する輸送実験など生体系レベルでの応用が可能である。 細胞レベルで使用可能な新規ナトリウム、カリウムイオン蛍光プローブの開発は、イオン選択性、蛍光応答に対する分子設計を完了し、膜透過機能を有する化合物の合成を進めており、近い将来に実用可能な蛍光プローブの完成が期待できるところまで到っている。
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