イメジインテンシファイア-を検出器に備え、試料を150Wのキセノンランプ白色光で励起し、512本の蛍光スペクトルを10ミリ秒の時間分解能で連続記録可能な装置を組み立てた。さらに浜松フォトニクス、L-4633キセノンフラッシュランプを導入し、時間分解能の向上を図った。反応2液を混合後、もしくはレーザー励起で反応を開始後、連続可変の遅延回路により1ミリ秒刻みで遅延時間を決定し、パルス照射(パルス幅=1マイクロ秒)で蛍光励起する。この方式では173本の蛍光スペクトルの連続記録が可能である。さらに、一定波長における蛍光強度の時間変化を蛍光ストップドフロー法により追跡するためのソフトも開発し、時間変化パラメータ決定を容易にした。 記録した蛍光スペクトルは、波長、反応時間、蛍光強度をそれぞれ座標軸とする三次元表示、または蛍光強度を偽カラーで示した等高線表示で行うこととし、データ解析と、解析結果表示のためのプログラムを種々の汎用数値解析用のソフト、とくにMATLABを用いて開発した。その概要は512×512のマトリックスに収めたスペクトルデータを先ずSVD法で処理して、変化する主要なスペクトル成分の個数を求める。次にこのスペクトル成分の全てを含む反応モデルを想定し、微視的速度定数の初期推定値を用いて微分方程式で各成分の消長を表わし、その結果を時間マトリックスに収納する。pseudoinverseを用いた演算で反応成分のスペクトルを求め、改めて時間変化のマトリックスから予想されるスペクトル変化を導く。計算で求めたスペクトルと、実測スペクトルデータとの差が最小になるように微視的速度定数の最適化をはかり、反応モデルと反応中間体スペクトルを決定するものである。 この手法は時間分解スペクトル一般に適用が可能で、その汎用性の高いことを実証した。蛍光スペクトルへの応用、とくに抗原抗体反応への適用は、適正な試料の選択により一層の発展が期待される。
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