研究分担者 |
東田 道久 北海道大学, 薬学部, 教務職員 (20207525)
北村 佳久 北海道大学, 薬学部, 助手 (60195295)
徳光 幸子 北海道大学, 薬学部, 助教授 (60001046)
岡田 文彦 北海道大学, 保健管理センター, 助教授 (40109517)
菊池 徹 富山医科薬科大学, 和漢薬研究所, 教授 (40025680)
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研究概要 |
今年度は老化に伴う脳の高次機能変化を生化学的薬理学的に解析する目的で,老化促進モデルマウス(senescense accelerated mouse:SAM)を用い,脳の各部位での老化による神経伝達物質受容体数の変化を特異的放射性リガンドを用いた結合実験により基礎的に解析し,次の結果を得た。 1)M_1ムスカリン性アセチルコリン受容体及びN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸受容体の数は,海馬において(2月齢,12月齢),有意に減少していた。2)GABA/ベンゾジアゼピン受容体及びセロトニン(5HT)_<1A>受容体数は,大脳皮質と海馬において加齢により有意に減少した。3)また両受容体数は,海馬において(12月齢),有意に減少していた。4)長期増強現象への関与が示唆されているプロテインキナーゼC(PKC)の発現量を[3-H]PDBu結合より求めたところ,海馬のシナプス膜画分及び大脳皮質と海馬の可溶性画分において(12月齢),有意に減少していた。海馬を含む大脳辺縁系は記憶や情動の形成に深く関与していることが知られている。早期に老化症状を示すSAMでこの領域でM_1ムスカリン受容体,NMDA受容体,PKCの減少が認められたことは,老化に伴う脳機能障害の一端を示していると考えられる。また不安を抑制する経路に存在するGABA受容体,5HT_<1A>受容体の減少は老化時の情動不安定に寄与していると考えられる。記憶障害を示すSAMが脳シナプス伝達系の神経化学的性質において異常を示すことが明かになった。このSAMに記憶改善作用を示すFGFを長期投与するとM_1受容体,NMDA受容体の減少が抑えられる結果も得,さらに詳細を検討中である。
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