研究概要 |
本年度では、新たに2種類のヒトソマトスタチン受容体サブタイプSSTR4,SSTR5の遺伝子クローニングに成功した。SSTR4は388個、SSTR5は364個のアミノ酸から構成されていた。SSTR4とSSTR5をCOS細胞で発現させ、ソマトスタチン14との結合特性を検討したところ、SSTR4とはIC50=1.6nM,SSTR5とはIC50=0.6nMといずれも高親和性を示した。SSTR4とSSTR5の組織発現をNorthern blotにより検討したところ、検索し得た組織及び細胞株ではSSTR4mRNAは膵臓癌由来のMIA PaCa-2のみに検出されたが、SSTR5mRNAはいずれの組織、細胞株においても認められなかった。すでに画像診断や薬物治療に使用されているソマトスタチンアナログであるSMS201-995はSSTR4とは殆ど結合せず、SSTR5とはIC50=7nMの親和性で結合が認められた。現在まで同定した5つのソマトスタチン受容体サブタイプSSTR1〜5mRNAの発現をreverse-transcriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)を用いて検討した。インスリノーマの4例では症例により発現するサブタイプが異なり、受容体の発現に多様性が認められた。グルカゴノーマの2例ではSSTR5を除きすべてのサブタイプの発現が認められた。カルチノイドの1例ではSSTR1と4のみ発現が認められた。腫瘍増殖抑制作用を有するSSTR201-995は5つのサブタイプのうち、SSTR2と最も高親和性を有することが示された。SMS201-995はグルカゴノーマで有効、カルチノイドでは無効であることより、内分泌腫瘍におけるSSTR2の発現の有無がSMS201-995の有効性を決定する1つの因子である可能性が示された。
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