研究課題/領域番号 |
04557132
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
板倉 光夫 徳島大学, 医学部, 教授 (60134227)
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研究分担者 |
鴨頭 峻 大塚製薬株式会社, 細胞工学研究所
小海 康夫 国立小児病院, 小児医療研究センター
宮崎 純一 東京大学, 医学部, 教授 (10200156)
岩花 弘之 徳島大学, 医学部, 助手
吉本 勝彦 徳島大学, 医学部, 助教授 (90201863)
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キーワード | 遺伝子治療 / 膵ラ島B細胞 / 糖尿病 / I型糖尿病 / サイトカイン / IL-10 / リンパ球 |
研究概要 |
サイトカインは、分泌局所で種々の標的細胞に作用し、多様な作用を発揮する。IL-10は、in vitroでマクロファージ、Th0、Th1のIFN-γ等の合成と分泌を抑制し、I型糖尿病(IDDM)発症にはT細胞やマクロファージが主体をなすと考えると、IL-10はIDDM発症を抑制する可能性がある。一方、IL-10がMHC Class IIや接着分子の発現を誘導し、Th1が主体をなす寄生虫に対する免疫反応の初期にIL-10が誘導されること、細胞障害性Tリンパ球からIFNγとIL-10が分泌されること等からは、IL-10はIDDMを激症化させる可能性がある。そこで、最初に膵ランゲルハンス島(ラ島)B細胞自体には操作を加えずに膵ラ島A細胞からIL-10を傍分泌するトランスジェニックNODマウス(IL-10Tg)を用い、ラ島局所のIL-10の効果を検討した。さらに、膵B細胞特異的リンパ球にIL-10遺伝子を導入後、NODマウスに養子移入し、膵ラ島B細胞の免疫学的破壊の過程に与える作用を検討した。 IL-10Tgでは、糖尿病が激症化した。一方、IL-10を分泌する膵B細胞特異的リンパ球の単独養子移入では、自己免疫による糖尿病の発症率は15%程度で、対照の非導入リンパ球の養子移入による70%と比較して、発症率を抑制する可能性が示された。また、IL-10は、in vitroにおいて膵ラ島AおよびB細胞株に対して直接障害性、ないしはインスリン分泌に対して影響を与えなかった。 以上から、IL-10はトランスジェニックマウスの方法で持続的に作用させた場合には免疫反応を強めるが、リンパ球から病態局所に一時的に発現した場合には、炎症と自己抗原に対する免疫応答を抑制し、IDDMの発症と進展を抑制する可能性が示された。今後、免疫抑制性サイトカインの遺伝子を導入発現する膵ラ島B細胞特異的リンパ球が、非導入リンパ球の催糖尿病作用を抑制するか否かを検討する必要がある。
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