研究概要 |
本研究では,盲人が,触覚・聴覚などのマルチモダリティを用いて,地図などの複雑な図面情報を獲得・表現するのを支援するシステムの研究・開発を目的とした.平成5年度までの研究で,プロトタイプシステムを完成させることができた.このシステムは路地での車や店頭の音などを人工的に生成し,学習すべき環境をできるだけリアリスティックに再現でき,さらに,地図データベースから盲人への一方向伝達だけでなく,盲人自身の体験をデータベースに書き込め,パーソナル地図を作れるような双方向伝達機能を備えたものである. 平成6年度は当該研究の最終年度で,当初計画通り,システムの評価と,その結果に基づくシステムの改良を行い,研究のまとめを行なった.システムの評価は,プロトタイプシステムを名古屋盲学校に設置し,盲学校の先生・生徒の強力を得て,学校生活および日常生活での使用における効果・問題点を中心に,評価実験を行なった.この実験では,対象図面を地図に限定せず,神経衰弱などのゲームにも使用し,本システムがどのような分野で有効なのかも調べた. その結果次の2つの問題が明らかになった。一つは,操作に関することである.現システムでは,使用者の手は触覚での認識だけでなく,システムの操作もしなくてはならず,その結果,十分な触認識ができない.もう一つは,複数の人が触覚ディスプレイを同時にさわることができないため,特にゲームなどで必要となる触情報の同時共有に対応できない.前者の問題については,足ベダルを採用し,手による機器の操作頻度を少なくした.後者の問題の解決には,ネットワーク接続された触覚ディスプレイなどが考えられるが,これは今後の課題である.さらに,操作に慣れた人には長たらしい音声情報を,earconの使用により,内容を連想できる短い音に替えるなどの改良も行った.
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