| 研究概要 |
立位姿勢時の重心動揺スペクトルには数種のピーク(振動成分)が認められている。約10Hzの振動成分は下腿三頭筋の伸張反射弓に起源がある。重心動揺の約0.5Hzと1.3Hzの成分は,立位姿勢の固有振動モードに伴う成分である可能性をすでに示した。これは,足関節中心型(anklestrategy)制御と股関節中心型(hip strategy)の姿勢制御により発生しうるモードであること、従って,重心動揺のスペクトルには固有の力学的振動成分を表すピークが存在する可能性があることを明らかにした。また,フィードバックループで結合されている立位姿勢制御系の重心動揺と抗重力筋群活動(表面筋電図)や呼吸運動との因果関係,すなわち,「ゆらぎ」の特定の振動数の発生源に関する知見を得るための検討を行なった。当該年度の実績のまとめを以下に示す。
(1)立位姿勢時の身体の「ゆらぎ」を正確に計測するシステムを、床反力計、各関節角度を計測する伸縮型2軸角度計とパソコンで構築した。関節角度を計測するのは、床反力中心位置(重心位置)は、身体の部位の配置により決まるので、各関節角度のゆらぎと重心位置とは密接に関連しているためである。そのため、各関節角度の計測を容易にできるような、埋め込み型の柔軟性のある汎用角度センサー装着セットを、足関節部と膝関節部および股関節部について試作した。
(2)「ゆらぎ」は立位姿勢時いつも現れるわけでなく、適当な筋張力の大きさの条件の場合、顕著に現れる。したがって、立位姿勢時の大腿四頭筋などのの抗重力筋の張力を推定できれば、「ゆらぎ」の実験の再現性をあげることができる。そのため、2次元矢状面の力学モデルによる筋張力の計算を即時にできる方法をすでに開発したので、この方法も本システムに組み入れた。
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