研究分担者 |
北村 忠久 塩野義製薬(株)研究所, 部長
水谷 誠 日本生物科学研究所実験動物研究所, 主任研究員 (40072467)
落合 謙爾 北海道大学, 獣医学部, 助手 (80214162)
御領 政信 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (80153774)
林 正信 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (10130337)
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研究概要 |
我々は振戦を示す1羽の日本ウズラを出発点とし,常染色体性単一劣性遺伝により支配されたミュータント系を確立した。この系統はホモ接合体のクローズドコロニーとして維持されているが,全てのウズラが振戦を示す。 本ウズラの基本的病変は,中枢ならびに末梢神経における神経軸索内にニューロフィラメント(NF)を先天的に欠損していることである。このため各神経線維の太さが発達せず,神経線維を主体とした領域,例えば脊髓白質は正常よりも30%ほど狹小となっている。 このNFの欠損を蛋白レベルで解析した。その結果,正常ウズラは,NF-H(170KD),NF-M(160KD),NF-L(70KD)の3種類の蛋白質サブユニットを有していた。ところが,本ミュータントウズラでは,脳細胞骨格画分,脊髓全蛋白質および坐骨神経全蛋白質中には,上記3種類のサブユニットは検出できなかった。一方,免疫蛍光法による脊髓の組織切片では,NF-Lに相当する反応産物はいずれの部位にも検出できなかったが,抗NF-Hと抗NF-M血清に対しては,白質の少数の軸索と腹角の神経細胞体が陽性所見を示した。以上の所見から,本ミュータントウズラは,NFのサブユニットのうち,NF-Lが欠損しており,このためNF-H,NF-Mは合成されても,NFはうまく形成されないものとみなされた。 このミュータントウズラに対して,NFに選択的に親和性のある薬物を投与した。薬物としてアクリルアミドを用いた。その結果,正常ウズラでは軸索症が引き起こされたが,ミュータントウズラは無反応であった。これは元来NFを欠損しているからであるが,本ウズラはこのような薬剤の検索に用いられると同時に,NFの生物学に大いに利用されることが期待できる。
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