研究概要 |
ラット受精卵の凍結保存法のうち、瞬時に凍結させるガラス化法(Vitrification法)の簡便法はまだ確立していない。さらに国内において実用的にラット受精卵の凍結保存を行っている施設の実体は全くわかっていない。以上の事からこの研究では次の事を目的とした。 1.従来の緩慢法を用いたラット受精卵凍結方法の標準的方法を示す。 2.ラット受精卵凍結のガラス化法(Vitrification法)を開発する。 3.効率の良いラット受精卵の採取法を確立する。 4.国内におけるラット受精卵凍結保存の実態を調査し、データベースを構築し、公表する。また保存施設間の情報交換のネットワークを作る。 ラットの緩慢法による受精卵凍結保存は、やはり水野らが報告した2細胞期胚凍結法が優れている。この方法は、2細胞期という早期に採卵するために凍結可能胚が多いことと、細胞が2つしかないために胚の善し悪しの判定が容易であることのためである。一方、ラット胚のガラス化法は、一つの方法を研究分担者の平林真澄が1990年に発表した。凍結保護物質は90%VS1(18%DMSO,14%アセトアミド,9%プロピレンアルコール,5.4%ポリエチレングリコール)を用い、1段階法と2段階法を行ったが、より簡便な2段階法では保存効率は大幅に低下した。また葛西孫三郎が行った方法は、凍結保護剤としてフィコール、蔗糖、エチレングリコール用い1段階法で行ったが、EG濃度が30%の所で良好な生存性が認められた。しかし今後さらに改良の余地がある。ラット受精卵の採取法は、石川尚明が誘起排卵剤を体重当たりで一定にした量を投与することにより、効率のよい採卵法を示した。また山崎は近交系ラットからの誘起採卵率の系統間の差異を示した。 またわが国のラット受精卵凍結保存の実体の調査とデータベースの作成に関しては、研究代表者が参加している科学研究費総合(A)「わが国の実験動物遺伝子資源の国際的有効利用のための情報システムの確立」半田班によって現在行われており、重複を避けるためにこの班では行わなかった。
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