研究課題
ヒト細胞をマウスに生着させることができればきわめて高い医学的応用が考えられる。しかし、現在までヌードマウスあるいはSCIDマウスを用いても約30%程度のヒト腫瘍しか生着させることができず、特に正常細胞を生着させることは難しい。この主な原因はこれらのマウスにはNK(ナチュラルキラー)細胞活性が高く、このため移植細胞が拒絶されてしまうためである。われわれは、NK細胞がIL-2受容体β鎖(IL-2Rβ)を強く発現すること、およびNK細胞の増殖がIL-2依存性であることに注目し、IL-2Rβに対する中和抗体TM-β1を投与したところ、生体内においてNK細胞を選択的にかつ長期的に欠損させることができることを発見した。最近の実験では、1mgのTM-β1抗体を正常成熟マウスに一回腹腔内投与することにより3週間以上NK細胞が消失することを観察している。同様にSCIDマウスに投与するとやはりNK細胞が長期にわたり消失し、徳島大の前田との共同研究では、ラット骨髄を移植することにより今まで困難であったラット造血系細胞によるSCIDマウスの再構成が可能であるという結果が得られている。ヒト腫瘍においては甲状腺癌の移植を試みているが、成功していない。そこでNK細胞により感受性をもつと考えられる造血系腫瘍、特にATLを含む白血病、悪性リンパ腫の移植実験を開始している。ATL細胞の移植に関しては予備的ではあるがよい結果が得られている。寄生虫感染実験についてはまだデータが得られていない。
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