研究概要 |
平成4年度前半までに主たる装置となる「静電容量法による移動水分量(WR)測定装置」を開発し、2,3の紡織繊維束試料を用いてその有効性を評価した(WaterTransport along Textile Fibers as Measured by an Electrical CapacitanceTechnique,Textile Res.J.,in press)。さらに、測定データを直接コンピュータに入力して解析するためにソフト及びハード両面での改良を行った。また、本年度の設備備品費により「繊維表面エネルギー測定装置」を購入し(基本設計は当申請者による)、現在、試料取り付け方法などの(SE)測定技術の確立を目指して試行錯誤を続けている。 毛髪試料の評価については予備的検討を終えたところである。洗浄された毛髪試料に酸化剤(DCCA:ジクロルイソシアヌール酸)による表面酸化処理及び紙やすりによる物理的損傷を加えて損傷毛髪を調製し、各試料の損傷度を走査電子顕微鏡法及びアミノ酸分析法により評価した。一方、未損傷毛髪及び損傷毛髪試料束中の移動水分量をWR法によって評価したところ、未損傷毛髪試料ではほとんど水分移動が認められなかったのに対し、損傷毛髪束では明瞭な吸水挙動が観察され、しかも毛髪の損傷度と移動水分量との間には相関性の成り立つことが示された。さらに、各試料のSE測定値とWR値との相関も検討中であるが、現段階ではSE測定値の再現性が乏しくもう少しの努力が必要である。なお、これらの成果の一部は「コンデンサー法による毛髪損傷度の評価」と題して、繊維学会年次大会(1993年6月、東京)で発表する予定である。
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