研究概要 |
高度不飽和脂肪酸の定量に必要な、アシル-CoAオキシダーゼ(ACO),脂肪酸酸化酵素複合体(HDT)の大量発現系も確立し、それぞれ精製にも成功した。アシル-CoAシンテターゼ(ACS)の研究経過は次のとうりである。ラットより5種類のタイプのACS(ACS-I,II,III,BACS-I,II)のcDNAを単離し、その構造と性質を明らかにした。ACS-IとACS-IIは主に肝臓で高く発現するのに対して、ACS-IIIは小腸で最も高く発現する。BACS-IIおよびBACS-IIは脳特異的な酵素である。ACS-I,ACS-IIIとBACS-Iは互いに類似した構造で、大腸菌に発現させ、精製した酵素の性質も類似していた。また、ACS-IIとBACS-IIは互いに類似した構造をもっているが、ACS-I、ACS-IIIおよびBACS-Iとは全く異なっていた。BACS-IIcDNAは大腸菌で大量発現ができなかったので、COS細胞に導入して大量発現させ精製した。BACS-IIはアラキドン酸、エイコサペンタエン酸とミリスチン酸に最も高い脂肪酸基質特異性を有することが明らかになった。BACS-IIは大腸菌で大量発現ができないので、これと性質の類似したACS-IIを大腸菌で大量発現させ精製した。ACS-IIはBACS-IIと同様に、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸に最も高い脂肪酸基質特異性を有することが明らかになった。ACS-IIが本研究の目的に適合した酵素であることが判明した。これらの研究結果から、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸に最も親和性の高いACS-IIとこれらの高度不飽和脂肪酸を活性化できない微生物由来のACSを組み合わせることによって、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を定量することが可能となった。
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