研究概要 |
我々はこれまで,二分子膜を形成することが可能な陽イオン性両親媒性化合物の中に動物細胞内への高い遺伝子導入能を持つものがあることを見つけ,それらの物理特性と遺伝子導入効率との関係を調べてきた。 今回は,(1)新たな化合物を数種設計・合成し,(2)それらおよび以前に好結果を得ていた化合物について,いくつかの細胞に対する遺伝子導入能を比較検討するとともに,(3)代表的な二分子膜につてDNAとの相互作用の様子を解析した。 (1・2)培養温度以下の相転移温度を持ち,コネクタ-部の種類やスペ-サ-やテ-ルの長さの異なる化合物を新たに9種合成してそれらの遺伝子導入能を検討し,これまで得られていたものと比較した。COS,CHO,NIH3T3,CV‐1,HepG2アド数種の細胞について検討した結果,細胞によって二分子膜化合物に対する選択性があることが分かった。すなわち,個々の細胞に適した化合物の開発の必要性が明らかにされると共に,導入の機構が非常に興味ある問題であることが示された。 (3)二分子膜・DNA複合体のCDスペクトル,NMRスペクトル,蛍光特性,形態観察等を行った。複合体を形成することによって,両者とも構造変化が観察された。二分子膜はその分子配向性が乱され,その程度は遺伝子導入能の高い相転移温度が培養温度より少し低いものが最も大きかった。一方,エチジウムブロミドによる蛍光特性の変化から,DNAヘリックスにおける塩基間の間隔も広がっていることが示唆された。
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