研究概要 |
キネテックパラメータの決定に必要なミクロゾームエンドペプチダーゼ(MEP)を得るためにウサギ肝臓20匹分のLubrol抽出液より、Kawabataらの方法を用いて約0.1mgのMEPを精製した。精製時のフラクションアッセイには、従来までのデカペプチド(Ac-A-R-V-R-R-A-N-S-F-L)とフルオレスカミンによる蛍光発色ではなく、今回開発した蛍光消光基質(Abz-A-R-V-R-R-A-N-S-Dna)を用いた。この方法は、5ngの酵素があれば測定可能であり、感度の点では従来の方法と変わらないが、アッセイに要する時間が約1/4に軽減された。加えて、測定誤差も小さく、活性のバックグラウンドが低いのが特徴である。また、MEPによるこの基質の切断位置を確認するために、反応後の基質をHPLCで分離し、アミノ酸分析したところ、MEPは、Arg-Alaの結合を切断していることが確認された。そこで、ビタミンK依存性凝固因子のプロセシング部位を参考にして、9種の蛍光消光基質を合成した。kcat/Kmで判断すると、最も良い基質は、Abz-A-R-V-R-R-F-F-S-Dna(1,210,000M^<-1>s^<-1>)であった。一方、MEPと60%の相同性を有するメタルプロテアーゼ24.15が水解するangiotensin I,LH-RH,dynorphin Aなどのペプチドホルモンに対しては、MEPはまったく反応しなかった。さらに、塩基性アミノ酸を多くの含むヒストンH4、あるいは、プロテアーゼの基質特異性を決定する際に用いられる可溶性還元リゾチームに対してもまったく作用しなかった。ところが、MEPは、αネオエンドルフィンやブラジキニン、BAM-12を非常によく水解した。それらの切断位置を決定してみると、P1部位のアミノ酸に共通性は見られず、MEPのペプチド水解における基質特異性を特定するには至っていない。現在さらに詳しいキネテックを行なっている。また、MEPに特異的なペプチド性のインヒビターの合成を進めており、このペプチダーゼの基質特異性を明かにする予定である。
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