メダカを用いた生殖細胞変異の高感度多重検出系の開発

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04558026
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 嶋 昭紘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (60011590)
• 研究分担者: 高橋 秀夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90013333)
• キーワード: 生殖細胞突然変異 / メダカ / 特定座位法 / 誘発奇形 / ガンマー線 / 原子炉放射線 / エチルニトロソウレア / 優性致死

研究概要

メダカ特定座位法の開発を始めてから8年がたち、メダカを用いた生殖細胞変異検出法は欧米のゼブラフィッシュ研究者たちの注目するところとなってきた。本研究では、1993年12月29日までに840、435個の胚、遺伝子数にして2、204、164個を調べ、メダカ生殖細胞変異検出系がこれまでにない高感度多重遺伝影響検出系であるとの確信をますます深めるにいたった。
1.今年度は、主にエチルニトロソウレア(ENU)に関する実験を行った。50〜70匹の野生型雄メダカを、使用直前に調製した0.1、0.5、1.0mM ENU水溶液に、2匹あたり10mlの割合で2時間泳がせ処理した。処理した雄メダカを水道水中に一晩おいた後、無処理雌テスターメダカと1対1で交配し、F_1胚での優性致死突然変異、総突然変異、生存突然変異および奇形を調べた。
2.優性致死突然変異に関しては、0.1mM ENU処理群で雄生殖細胞の分化段階によらず、有意な増加が認められなかった。これは閾値の存在を示唆してはいるが、今後さらに実験を繰り返す必要がある。
3.総突然変異誘発率を精子・精細胞と精原細胞で比較すると、約37:1と圧倒的に精子・精細胞が高感受性であった。
4.しかし生存突然変異率では、精原細胞が精子・精細胞よりも高感受性(約3:1)を示し総突然変異誘発と顕著な相違を見せた。両突然変異の誘発機構にどのような違いがあるのか、極めて興味ある問題である。

研究成果

• [文献書誌] A.Shima & A.Shimada: "The Japanese Medaka,Oryzias latipes,as a new model organism for studying environmental germ-cell mutagenesis" Environmental Health Perspectives. (In press). (1994)
• [文献書誌] K.Naruse,A.Shima,M.Matsuda,M.Sakaizumi T.Iwamatsu et al.: "Distribution and phylogeny of rice fish and their relatives belonging to the suborder Adrianichthyoidei in Sulawesi,Indonesia" The Fish Biology Journal MEDAKA. 5(In press). (1994)
• [文献書誌] T.Matsuzaki,M.Sakaizumi & A.Shima: "Inter- and intra-specific distribution of an antigenic epitope found in an inbred strain of the Medaka,Oryzias latipes" Journal of Experimental Zoology. 267. 198-208 (1993)
• [文献書誌] T.Funayama,H.Mitani & A.Shima: "Ultravioletinduced DNA damage and its photorepair in tail fin cell of the Medaka Oryzias latipes" Photochemistry and Photobiology. 58. 380-385 (1993)
• [文献書誌] A.Shima,A.Shimada & Y.Kubota: "Fish Biology:From Genes to Organism" National University of Singapore, 252(1-10) (1993)
• [文献書誌] K.Naruse & A.Shima: "Fish Biology:From Genes to Organism" National University of Singapore, 252(210-215) (1993)