トリチウムガス除去装置のバイオリアクターに用いるのに最も適する菌株として、土壌からの分離菌株8種と分譲菌株10種の中から選定したStreptomyces misionensis JCM4497株について、固定化担体に最もよく結合させ高いトリチウムガス酸化活性(ヒドロゲナーゼ活性)を発現維持させるために必要な担体の前処理や菌体の培養条件の検討を行った。担体としてシランリングとファイバームを用いたところ、それぞれの最適培養条件において両者による固定化菌体の単位表面積当りのトリチウムガス酸化活性を比較するとファイバームの方が約5倍高かった。またバイオリアクターとしての保存性についても、ファイバームによる固定化菌体は4℃で170日間保存してもその活性は殆ど変わらず維持できることが分かった。シランリングの場合は4℃、170日間の間に酸化活性がやや増大したが活性にバラツキが多かった。従って、硬度の点でシランリングは優れているものの、酸化活性と保存性の点からはファイバームが担体として最も良いと結論された。また酸化力改良を遺伝子工学の手法で行うためにトリチウムガス酸化活性の実体である酵素ヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニングを試みた。これまで放線菌Streptomyces属における同遺伝子に関する報告はない。すでに知られている他の細菌の同遺伝子をプローブとしてゲノムDNAについて検索し、プライマーを合成してPCR法で特異的DNA断片を増幅し、塩基配列を検討している。今後ヒドロゲナーゼ遺伝子全長のクローニングを計画している。除去装置の基本構成は固定化菌体を充填したガラスカラム、-60℃のコールドトラップ、モレキュラーシーブ、シリカゲルトラップ、そしてトリチウムモニターとし、性能の評価を行った。
|