研究概要 |
聴解訓練負荷(呈示速度)の増減が聴知覚及び聴解力(聴単位)に及ぼす影響を解明すべく研究を行った。呈示刺激は,s処理及びソニーTCM-AP1を用いることにより、再生速度以外の要因は可能な限り統制することができるようになった。音声の刺激長や聴単位の測定はカワイ音声分析システムで正確に測定した。また、聴単位について形式化を行った。呈示速度は聴単位に拮抗的に作用することも観察され、記憶域と記憶量(音節数)の変数について回帰分析を行う必要がある。 記憶保持に関して、語が連続して発音される場合の語尾の子音と語頭の母音(CV)の音連続の現象に着目して実験を行った。s処理によって段階的に変化させた音声(速度比 100→90→80→70→100%)を聴取した被験者群の方が原音声(100%)のみを聴取した被験者群より確認テストの得点が上昇する傾向が観られた。 多種の素材の音声分析を行い,s処理を施した英語音声と自然な発話との比較を行った。発話速度の3要因(調音速度,ポーズ平均長,ポーズ頻度)のうちポーズ頻度の違いが最も大きく異ること,またこの違いは自然な発話のポーズ頻度の変動内であることを数値によって示した。 音声面のみの聴解,記憶保持,及び内容理解には自ずと限界がある。しかし,学習に求められる多感量的アプローチ(multi-sensory approach)の概念に則り,映像情報をs処理音声と同時に呈示することで,聴知覚の限界閾を高めることのできる相乗作用を一部確認することができ,難解な音声現象の効果的な教授に資する大きな可能性を持つと言えよう。 これらを英語教育に適用できれば,s処理により,効果的な授業に繋げられる可能性があると考えられる。
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