研究概要 |
(1) s処理が教育システムと極めて融合しやすいこと,また,その使用方法を外国語教育での例を中心に述べた。 (2) 映画やビデオなどの素材において,一体となっている音声情報と映像情報の両方に対し,同時に速度変換処理を施し,時間的に同期が取れている両情報を一緒に提示することの,学習上における相乗作用について,並びに,このシステムの使用例を述べた。 (3) 従来の線形速度変換処理アルゴリズムをさらに発展させた非線形速度変換処理アルゴリズムを提案し,英語母語話者によるその処理音声の自然さについての評価実験では良好との回答を得ている。 (4) 調音速度と発話単位の長さの2要因が聴解に及ぼす影響について調べる実験により,s処理により発話速度を遅くした刺激と音声分析システムによりポ-ズを挿入し発話単位を短くした刺激はオリジナルに100%の処理を施した刺激よりも聴解の度合いが向上するという結果を得た。また2要因の効果の度合いの比較では,発話単位の聴解への影響の度合いの方が大きい傾向が観察された。 (5) 従来,音声科学とリスニング研究は互いに深い関係がありながらもそれぞれが独自の発展を遂げてきた。ここでは音声科学の知見をとりいれた外国語リスニング学習を考察した。 (6) 呈示速度の増減が聴覚記憶容量(聴単位長)に及ぼす影響を解明すべく研究を行った。音声の刺激長の測定は15秒未満の刺激はカワイ音声分析システムで,15秒以上の刺激はs処理システムで測定した。実験結果は,単語刺激では速度比0.70のとき,聴単位長の伸長が観察されたが,文刺激では有意な差は観察されなかった。単語刺激のときは,音韻セグメント長の伸長により音響的手がかりの抽出能力が向上したためであると考えられる。
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