研究概要 |
デキストランン(ATD)及びカルボキシメチルデキストラン(CMD)と塩化第一及び第二鉄との直接反応による磁性流体(ATDM及びCMDM)の合成法の確立と、分画による磁性酸化鉄コア(4〜10nm)の粒系分布とDM複合体のconformation(立体配座)を調べた。粒径のそろったDMコアと結合する分子1本の占有面積は、分子量が増すと増加し、同一分子量ではCMDの方がATDよりその傾向が大きく、立体障害が結合に影響することが明らかとなった(分子量2万のATD及びCMDを用いたDMでは、それぞれ6.33及び5.52nm_2)。 メスバウアー効果の測定により、デキストラン分子と磁性酸化鉄超微粒子は直接結合していること、及び官能基とコア磁性酸化鉄との結合によって、大きな内部磁場を持つ成分(3価鉄原子)が増加すること見出した。ATDM及びCMDMの希釈溶液のT_1及びT_2緩和時間と、濃度及びコア粒径との関係を求めた。次に4種類のDMをラットに静注し、1時間後の34種類の臓器への取り込みをパルスNMRによるT_1及びT_2緩和時間の測定により調べた。特に、肝臓,脾臓,心臓,脳,肺など12種類の臓器については、定量的評価を行った。ATDMは肝臓及び脾臓に選択的に取り込まれることが明確となり、両臓器のMRI造影効果の著しいことが明らかとなった。また、CMDMはATDMと異なり血液中にかなり残留し、その生体内挙動について検討が進められている。摘出臓器について、光顕(鉄染色)及び電顕(切片)による観察を行い、組織または細胞内での存在状態の解明を行った。光顕観察では、鉄成分(Fe^<3+>)が肝臓組織全体に点存し、脾臓においては中心付近に局在していることがわかった。電顕観察では、DMが肝臓,脾臓ともに食細胞のライソゾームに取り込まれ、凝集していることが観察と分析の結果から確認された。本研究によるDMは、各種塩類・酸・アルカリに対して極めて安定で、温度に対しても充分な保存安定性のあることを確認した。
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