1ウィトゲンシュタインの遺稿の解読・浄書について (1)手書き原稿MS140については解読及び機械入力をすませ、プルーフ・リーディングを残す状態、MS114は解読がほぼ完了した段階である。MS115については作業を5年度に持ち越した。 (2)タイプ原稿TS213については900枚を超える原稿のうち、『哲学的文法』第II部に対応する箇所についてはTS213と同じ内容であるため、今回の作業範囲から除外することとした。第I部の解読・浄書も作業量の関係上、手書きの訂正部分をまず消した上でタイプ部分をOCRで読み込んだ上、これをパソコン上で訂正する、という作業を実行中である。この作業終了後、5年度に手書き部分の加除訂正を付加する。なお、作業にあたってはコンピューターでのテキスト編集技術の種々の応用を試みている。 2他の研究者との意見交換について (1)サンプルコピーを付した「中間報告書」を作成し、全国のウィトゲンシュタイン研究者、哲学研究者、人文科学のテキストデータベース研究者に送付し、助言を求めた。これに先立ち、若干の重要な研究者を訪問、面談した。 (2)貴重な助言が得られたと同時に印象的であったのは、研究者の関心の多様性である。即ち、本研究の副産物であるべき読み易いプレーンテキストの提供と、使い易いデータベースの提供の両者が、ややもすると矛盾しかねない要求と思われることである。また、マシーンやソフトの互換性の制約、テキスト記述の国際的規約の欠如等の問題が改めて確認された。これらの克服が次年度の課題である。
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