1 研究の国際協力について (1)前年度末の中間報告をかねたアンケートが機縁になり国際共同研究の途が開けた。ベルゲン大学(ノルウェー)のウィトゲンシュタイン・アーカイブズ(WAB)が遺稿のデータベース化に本格的に着手していることが判明し、中間報告の英訳を送付したところ、先方の負担で招待をうけ、3週間共同研究を行った。この科学研究費補助金に直接関係する作業としては、DB化の問題点の検討、転記済みのテキストの照合、等を行った。 (2)他方、従来遺稿のDB化を試みたグループが著作権に関して遺稿管理人との間に惹起した問題の経緯も明らかになった。WABの規模、進展状況、WABのプロジェクトが遺稿管理人の承認を得ていること等を考慮すると、現在の我々の試行的研究を本格化するのは現実的ではない、と判断した。それ故、WABに対して助言・モニターの役割を果たす国際的ネットワークの形成を考え、成案を得るべく協議中である。 2 我々の転記した遺稿の扱いについて 我々が先に転記を完了したMS140については、我々を第一転記者としてWABに寄託し、将来の公表に委ねることとした。TS213については我々の転記とWABが引き継いでいる転記との優劣を検討するところである。 3 中期ウィトゲンシュタインの稿本間の関係について この間TS213、MS114、MS115、MS116、MS140を相互参照することにより『哲学的文法』の成立過程、ウィトゲンシュタインの具体的な思索の過程について多くの知見が得られた。吟味の上、詳細な報告をすべく、目下準備中である。
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