研究概要 |
レウキッポスやデモクリトスにはじまる古代初期原子論が、ヘレニズム期の自然哲学のみならず、諸学芸・技術などに与えた影響について、とりわけエピクロスならびにエピクロス学派や、それを継承した思想を中心に文献学的に調査吟味することを主眼にしていることから、昨年度に仕上げた「エピクロスの神観」の研究方法を踏襲し、断片の研究を行った。 先ず、G.Arrighettiの編集した断片と、H.Usenerの編集したEpicureaにおける断片を対比しながら、写本の欠損部分を推定しながら解読につとめた。文献の出所はプィロデモス,プルタルコス,アテナイオス,キケロなどに及ぶが,最も解読に困難をきしたのはヘルクラネウム発掘のパピルス文献であった。エピクロスの『自然学』に関するものの多くが、それに属するが、文の前後に不明な箇所があり、一貫した意味をとることは至難のわざであった。しかし一応エピクロスのエイドーラ説に関した叙述として、今後纒ぬる積りである。 惜むらくは、本研究者の所属する学部の移転に伴い、予定通り研究時間をさくことが難しかったことを付言しておく。
|