研究課題/領域番号 |
04610006
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
神野 慧一郎 大阪市立大学, 文学部, 教授 (10046948)
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研究分担者 |
川添 信介 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (90177692)
中才 敏郎 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (20137178)
小林 道夫 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (10137177)
塩出 彰 大阪市立大学, 文学部, 教授 (20039134)
藪木 栄夫 大阪市立大学, 文学部, 教授 (10047285)
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キーワード | 心の哲学 / バイオエシックス / 生命 / 人格 / 生命の質 / 脳死 / 安楽死 |
研究概要 |
本研究は、最近の心の哲学の成果を踏まえて、バイオエシックスの問題の考察を進めることを試みた。生命の問題が、なぜ最近とくに道徳的問題として扱われるのか。それは、なぜ生命を尊重すべきかの根拠に関して、ディレンマが生じるからである。生命はもちろん尊重されるべきであると、誰しも考える。しかし、尊重されるべき理由はいかなることにあるのか。生命は、それが生命であるが故に尊重されているのではない。もし、生命はすべて尊重すべきなら、われわれはいかなる生命も殺してはならない。動物実験などはもってのほかである。人格に近いようなものをもつ動物はどう扱えば良いのか。 塩出は、安楽死や、脳死、生殖に関する医療技術などの問題を論じる場合に鍵になる概念「生命の質」について論じ、この概念がいまだ不明確のままである、と指摘している。塩出は、この不明確さのよってきたるところを解明する一助として、ギリシア哲学における生命論を考察し、すべての生命を同質とする流れと、理性的な生命を尊重する流れとが古代から存在してことを示す。小林と中才とは、人間の生命が尊重されるべき理由を、人間が人格をもつ点においている。しかし、小林は人格は人間の能力や資質ではなく、それに先立つ原初的なものであって、この人格とこれに対する道徳感情とが生命倫理を考える際の要因になる、と言う。小林に対して、中才は人格のパラダイムは人間であり、人間を殺すことの不正さが人格を殺すことの不正を帰結すると論じる。藪木は生命体を内的合目的性という観点から論じ、生命体の因果論的説明と機能論的説明の両立性を示す。また、芦名はキリスト教における生命論から医療と健康の問題を、川添はトマス・アキナスの倫理説が安楽死を必ずしも否定しないことを論じる。神野は生物学上の知見に従いつつ仮説的議論を提起し、道徳の成立の自然主義的検討を試みた。
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