研究概要 |
本年度は2資源3グループの実験パラダイムのもとで5人ゲーム事態を設定し,前年度に実施された3人,4人ゲームの結果とあわせて,定量的,定性的な分析を行なった。この状況設定は前年度に行なわれた実験結果の一般化となっている。設定状況は,2種類の固定量資源(X,Y)が存在する場合に,利用者グループAは資源Xのみを,グループBは資源Yのみを,グループCはX,Yのいずれかを選択して消費するという場面である。2つの資源の利用者数はグループCのメンバーがXを選ぶかYを選ぶかに依存する。5人ゲームではグループCが3人となる。 ゲーム終了条件は、3試行連続で同一要求パターンが見られた場合、あるいは30試行とし,各被験者は毎回,自分の要求量をどのように決定したか,他の利用者の要求量の推定,利用者ABには利用者Cが自分の資源を選ぶ確率の推定などを報告するよう求められた。被験者数は5グループ計25人を用いた。 実験データの分析に基づけば,大きな特徴として,同一環境の被験者グループが完全な調整戦略を利用することが判明した。完全調整戦略とは,同一の資源を利用する複数のプレイヤーが,コミュニケーションが禁じられた場面であっても,互いに要求量を調整して,トータル要求量が資源量に等しくなるよう調整することである。その発生頻度は,5人ゲーム事態で約半数のグループが完全調整戦略でゲームをプレイしている。この結果は,事前に行なわれたコンピュータ・シミュレーションならびに、相互依存モデルによる解析結果(前年度に終了)とはかなりの食い違いを示し、ゲーム理論的解と行動レベルとの乖離現象の心理学的説明が今後の興味ある課題となっている。
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