実験的研究 1.疑問生成力の発達的比較 (1)疑問対象場面のビデオ映像化 収集された子どもの疑問の中から、「シャンプーは泡になると白くなるのはなぜか?」を選び、洗髪場面を映像化した。また、それと同型場面として、ガラス瓶を砕くと白に変化する場面も映像化した。(2)実験 小学生と大学生を被験者とし、ビデオを提示、自由発話法により反応を記録した。その結果、キー疑問の検出数に小学生と大学生で有意差はなく、大人になるにつれ、疑問検出力そのものが低下するのではないことが示された。 2.疑問の社会的抑制に関する実験 (1)教室の実際場面実験 心理学の入門コースのクラスで映画(「刷り込み」)を見せ、次週まで内容要旨と疑問をレポートさせた。通常の授業場面では、質問を促しても、その場で質問が出されることは稀である。レポートでは、大多数の学生が1個以上の疑問を挙げており、質の高い疑問もけっこう見られた。このことから、通常の授業場面では質問に対する社会的抑制が働いていること、疑問促進法として筆記レポート法が有効なことが示された。(2)実験的課題下での実験 文章材料を用い、3種の課題条件下(テスト、要約、記事執筆)で、疑問を集団内で発表する公表群と各自記入する非公表群を比較した。この結果、公表群ではどの課題下でも明らかに質問が抑制されることが示された。 理論的研究 疑問生成の認知的記述モデルを、社会的要因を加えて精緻化した。
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