本研究は、幼児期における両親に対する愛着体験が、当該大学生の愛国心、民族主義、あるいは国際主義的傾向の形成に与える影響の中で占める、認知スタイルの神経心理学的基礎づけに関する坂野の先行研究の結果を更に深めるために、親子間の認知スタイル及びラテラリティの指標を媒介変数として導入することをその目的としている。幼児期における愛着体験の高さが、愛国心の強さ結びつくという男子大学生での結果が、大脳皮質における分化度の高さによって強められるという先行研究での成果をより精密なものにするために、親子間でのラテラリティの一致・不一致を検討し大学生対象者をより細かく分類することとした。 この目的のために、先行研究と同様の国民性質問紙39問、幼児期における母親及び父親との間の愛着体験質問紙33問、認知様式質問紙20問、利き手に関する質問紙5問、及び潜在的ラテラリティに関する質問(指組み、腕組みで上にくる手)から成る質問紙を岐阜大学教育学部145名、愛媛大学教育学部158名、及び愛知教育大学233名の男女大学生計536名に施行した。さらには親子間の認知様式及びラテラリティの関係を見るために本研究では両親への質問紙を追加したが、そこでは調査の折りに学生に記入させた両親の住所宛に両親の利き手、潜在的ラテラリティ及び認知様式質問紙を発送するという方法を用いた。現在約70%に回収率の回答を得て、大学生の結果との比較照合を行っている。 今回の調査の対象となった大学は、先行研究と同一のものであるので、結果の分析を待って次年度に行う予定の地域及び大学の選定を行って同様の調査を継続するか、あるいは今年度の対象者の中から特定の親子群を選択して、面接調査を含めたより深層にせまる研究へと転換するか検討中である。
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