研究1では1989年に行った先行研究と同一の3大学の学生、女子345名、男子180名)より「国民性」質問紙と両親に対する愛着体験質問紙に関する回答を得、先行研究との比較検討を行った。二度の調査の間に生じた国際緊張(湾岸戦争、カンボジア問題)の影響は国民性の「市民の自由」尺度の得点にあらわれ、男子では得点が低下したのに対して、女子では逆に上昇しているというように、国際緊張の影響の仕方は異なっていたが、国民性の4尺度と愛着体験の間の相関関係は相対的に安定したものであることがわかった。 研究2では女子学生293名、男子学生192名及びその両親からの回答を基に、潜在的ラテラリティ及び認知スタイルの親子間の伝承性、そしてこれらの要因が学生における「国民性」尺度と愛着体験の関係に及ぼす影響について検討した。潜在的ラテラリティでは指組みの際に左親指が上にくる型(指L型)が男子学生で親子間で伝承されることをまず確かめた上で、次の主たる分析を行った。男子のこの指L型では「愛国心」尺度の得点が指R型に比べて有意に低かったが、この結果は、指L型に対応する右半球の自由度の高い神経ネットワークに由来するものと解釈可能であった。「愛国心」を目的変数とする重回帰分析の結果、男子では親への愛着と指組みが有意な説明変数であること、そして女子では両親への愛着、子どもの印象性尺度、及び母親の分析性尺度が有意な説明変数であることが明らかになり、愛国心と愛着体験の関係にかかわる子ども及び両親の認知スタイルの作用の仕方の違いが明らかになった。結論として、男子の愛国心の特徴がもっとも明確な形で、かれらのもっている神経心理学的な機構と関係しているといえよう。
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