(1)対人関係における相互依存性の測定と類型化の目的で、H.H.Kelleyらの提唱するマトリクスを用い、関係性成員にとって重要度が異なるインシデントを中学生親子・高校生親子に提示して、青年期の親子関係における相互依存性の構造を吟味した。親子の間には、個々の相互作用状況を超えた一貫する傾向が認められた。再帰統制RCをほとんどもたず行動統制BC主体の相互依存性を示す親に対し、子は発達とともにRCを増大させ、運命統制FC主体の相互依存性を示した。 (2)自己解釈図式を独立的対相互依存的の次元で測定するための尺度を構成し、その構成概念妥当性の吟味を行った結果、対象者を一応分類することが可能となった。しかしなお独立と相互依存が一次元尺度の両極を成すのではなく直交する二次元として現れる可能性が認められたため、さらに検討を加えることとした。 (3)大学生の恋人関係と同性の友人関係のインシデントを設定し、恋人関係の相互依存性は行動統制BCで規定されるのに対し、友人関係は弱い運命統制FCに規定されることを確認した。さらに、自己解釈図式が相互依存型の人はそれが独立的である人に比べ、親密な二者間の相互作用(相互統制の量)に関係性外部の出来事の影響を受けがちであった。 (4)オレゴン大学および広島大学の学生各を対象に“Who am I?"形式で自己についての自由記述を収集した。アメリカ人(独立的)は自己を表現するのに自分の個人的特徴を言及し、日本人(相互依存的)は他者との関係や社会的カテゴリに言及するという仮説を検討中である。 (5)H.A.Wickらが知覚実験で見いだした認知スタイルの“場依存性-場独立性"次元と“相互依存的自己-独立的自己"の関係を先の尺度と埋没図形テストで測定し比較したが、明瞭な関係は見いだせなかった。 引き続きデータを補充して結果を取りまとめる予定である。
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