研究計画に沿って平成4年度は、(1)時間不安尺度の構成とその信頼性・妥当性の検討、(2)時間不安を規定する要因の解明を行ってきた。 (1)については、(1) 2つの下位尺度からなる時間不安測定尺度を構成し、因子論的妥当性を検討した。(2) 既存の不安尺度との関連を検討し、時間不安を独自な心理学的変数として考えることの妥当性が確認できた。(3) 時間不安尺度の英語版を作成し、日米の時間不安の比較を行った。アメリカのデータが少なく、確定的なことは言えないが、この尺度を用いることで時間不安の国際比較が可能になることが分かった。 (2)については、(1) 時間不安の程度と心拍率や呼吸率などの生理的リズムとの間には有意な関連は見られなかった。(2) 時間不安の程度により、未来時間用語のイメージの仕方に若干の違いがみられた。(3) 時間不安の高いものは低いものとくらべ、無為な時間経過を長く評価し、何かを行っている時の時間経過を短く評価する傾向があることが確認された。(4) 時間不安の高いものは、規範意識が顕著で、社会的な制約や規範に敏感であることが分かった。 時間不安尺度の標準化作業については、大学生を中心にデータを集めたため、どうしても母集団との間の偏りが生じてしまった。この点については、逐次、データ収集を行うつもりである。 生理的リズムについては、心拍や呼吸の他に血圧を指標とする必要があったかも知れない。また、短期的な精神テンポよりも、ウルトラディアン・リズムと時間不安との関連をみる必要があったかも知れない。 実験的なデータが不足している反省から、現在、時間プレッシャーをかけた時の課題解決の仕方が、高時間不安群と低時間不安群との間で、どのように異なるかを調べている。
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