当初あげた目的は以下の4つだった:1)落語のオチのおかしさの研究2)落語の外、万才、トーク、コント、CMのオカシサの研究、3)喜劇役者が外面に表出した動作と、それにより観客が感ずるおかしさの関係研究、4)観客の感ずるオカシサの直接評定と彼らの表情との関係研究。だが、予算の減額と労力不足のため、3)と4)をあきらめ、残る1)と2)とに全力を注いだ結果について報告する:先ず1)の落語のおかしさの研究の成果だが、落語の8演目を被験者に聞かせ、そのイメージをSD法様の14対の言葉によって7段階段評価させ、その結果を主成分分析によって解析した。その結果、(オチ)難解-容易、(話)うそっぽい-リアル、(オチ)奇抜-常識、(主人公行動)機械的-柔軟の4主成分が得られた。 料理人はオイシイ料理を創造するのに、甘・苦・鹹・酸の4基本味をどれだけずつ入れるかを考えるが、上記の4主成分はこの4基本味の様なものである。オカシイ演目というのは、4主成分のどれ位ずつ重みづけられればよいのかは、落語にとって基本的な大切な問題だ。これを解決するために、4主成分を独立変数、オカシサの素得点を従属変数とする重回帰分析を行ってみた。その結果、y=.757x_1f.291x_2-.374x_3+.252x_4なるオカシサ方程式が得られた。この意味は、オチが容易であって、奇抜であって、(話が)リアルであって、(主人公の行動が)柔軟であるほどおかしいとなった。2)の落語、万才、CMのオカシサの異同を調べてみると、落語は、直威的で、好きで、平和的で、渋くて、リズミカルで、あっさりしているほど、おかしいが、万才は、論理的で、好きで、攻撃的で、渋くて、リズミカルであるほど、おかしいとなった。CMは、直威的で、好きで、攻撃的で、渋くて、リズミカルでなくて、あっさりしているほど、おかしいとなった。以上でわかる通り、笑い研究のための科学的方法論も、徐々にではあるが、整備されてきたと言えよう。
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