平成4年度は、(1)大学生および40〜50歳代の男女を対象として、これらの人々がどのような属性によって自己をとらえているのか、またそのとらえ方が社会的な適応と関連すると思われる「孤独感」とどのように関係するかを明らかにすることを目的とする調査を実施し、あわせて、(2)客観的な行動レベルから自己同一性の拠どころとなる自己概含のの推定を試みることと社会行動に関係する巨視的変数をどのようにとらえるかの方法的検計をも意図した研究者集団における共同研究グループの形成に関する調査を実施した。 (1)については、現在データークリーニングと概括的な集計の段階にあり、(2)については粗集計をほぼ完了したところである。 以上の結果、i) 社会的文〓に応じて社会的自己同一性の拠りどころとなる自己概念は変動すること、ii) とくに青年層においては、伝統的な社会的自己同一性の拠りどころと考えられていた「性」「年令」「職業」「卒業または在学中に学校」「出自」などによって自己を位置づけようとするものが少いこと、 iii) しかし、それにもかかわらず、個人的あるいは人格的属性によって自己を定位する場合には適応的には不安気であること、また、iv) 過去30年間の間に、研究者集団において、出身校、所属、師弟関係の有無が共同研究グループ形成の要因としては、大幅に意義を失うに至っていること、など多大の貴重な示唆が得られている。
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