現代日本の幼児保育現場は、異文化の子どもたちを迎え、国際化の中で新しい保育を模索している。このような保育方法を見出すためには、主人公としての子どもたちが、この保育の国際化の中で、いかに発達するのかを明らかにする必要がある。本研究は、幼児の保育集団における異文化接触経験が、日本児や異文化児の発達や異文化理解にどのような影響を与えるかを、特に対人認知能力などの社会的認知能力、会話やコミュニケーション能力の発達、仲間関係などに焦点をあてて検討しようとしている。平成4年度は、その第一段階として、山形、埼玉の計8園計11クラス(3〜5才児)の子どもたちの縦断観察と調査を行った。この観察、調査は平成5年度も継続して行われる予定である。平成4年9月以後5年3月までに各月または隔月の観察と、子ども全員への2回の個別質問調査、保育者、保護者への質問調査が行われた。結果は分析中であるが、現在までに以下のような点が検討されている。 第一に、日本児の保育集団における異文化経験は、教師を媒介として異文化理解を促進する。ただしその理解には文化差の中立的な認識の他に、好意的理解、否定的理解がある。今後そのような差をもたらす個人差の解明が必要である。 第二に、異文化児の日本児クラスへの適応は、個人差もあるが概ね迅速で、家庭と園で異なる言語を用いる二言語使用の発達が促進される。しかし園では母語使用を拒む他、慣れない日本語でのコミュニケーションでは日本児との間にトラブルもあり、文化的学習に伴う葛藤がみられる。反面、異文化児は、集団の中で適切な友達を自ら選び取り、時には変更するなど、同化の方略をいくつか身につけている。今後この方略の分析とその利用の個人差、原因要因の解明が必要である。
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