国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)での中途失明者を対象とする歩行訓練の全プロセスを縦断的に観察記録し解析した。平成4年度までに4名の中途失明者(20歳代が2名と40歳台が2名)の訓練過程を観察・記録した。現在訓練過程での会話データを分析しているが、そこでは、 1)相互的な会話において、中途失明者の発話量が訓練過程の進行とともに増加する傾向がみられる。 2)それとともなって、中途失明者の口頭による空間表現に質的な変化が見られる、ことが明らかになった。 このような事実は当初の歩行訓練は空間についての「表現系」の変化を引き起こすという仮説を支持していると思われる。 現在二つの方法でこの問題をさらに検討している。 一つはこれまでに収集した4名の会話資料をさらに詳細に分析するという方法であり、第2は大学生を被験者として、両者が視覚的にコミュニケーション可能(お互いの姿が見える通常の会話場面)な事態と、視覚的なコミュニケーションが禁止される(両者の間に壁がおかれる)事態での会話内容を比較することで空間についてのコミュニケーション事態における視覚的な情報の影響を検討する、という方法である。
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