視覚が利用できない事態でのナヴィゲーションはどのように行われるのか?そのことを知るための一つの方法として中途失明者の歩行訓練を観察した。 中途失明すると通常ほぼ1年に及ぶ歩行訓練の過程を経て、単独歩行が可能になる。それは視覚以外の感覚的情報の意識化と、新しい「地図表現系」の成立によって可能となる。例えば、それまでは外界の見えが制御していた直線歩行の情報は横を走る車の音、路面の特徴の足裏での認知などが提供する。また絶対的方位系としての「東西南北」基準系の使用が視覚の代わる確実な地図的枠組みとなる。 このような特殊な事態での人と環境との相互作用についての詳細な分析を行った。晴眼者がナビゲーションに用いている情報系についての基礎的情報を提供することができた。 さらに実際の非視覚的ナヴィゲーションがどのように進行するのかについて調査を都内の地下街で行った。報告書には以下のデータとそれに基づく議論が記載された。 (1)国立所沢リハビリテーションセンターで行われる中途失明者の歩行訓練の全プロセスを縦断的(3〜6か月)な観察。 (2)都内地下街での非視覚的ナヴィゲーションについてフィールドワーク。
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