研究概要 |
嫌悪刺激の嫌悪性は、その強さを強くする以外に,その長さを長くすることによっても高めることができる筈である。本研究の目的は、ラットの摂水行動をベースラインとする条件性抑制の手法を用いて、電撃強度の操作によって得られるのと同じ効果を電撃の長さの操作によっても得られるかどうかを、電撃の予期と残効の両面から検討することである。まず実験1において、5種類の長さの電撃を無信号で与えることによって生ずる摂水行動の全体的な抑制の程度によって、これらの電撃の嫌悪性の違いを測定した。実験2では、これら5種の長さの電撃をUSとする条件性抑制実験を5群のラットを用いて行い、電撃の長さは条件づけに影響を与えないことを明らかにした。実験3においては、実験1で嫌悪度の異なることが証明された0.7秒と4.9秒の電撃の効果を、被験体間計画法および被験体内計画法によって検討した。その結果、実験2同様、被験体間計画法によっては電撃の長さは条件づけに影響を与えないことが確認されたが、異なる長さの電撃を異なる種類のCSに条件づけた被験体内計画法では、条件性抑制は0.7秒電撃に対するよりも4.9秒電撃に対する方が有意に顕著であった。これは被験体内計画によると、被験体は2種の長さの電撃を比較できるからであると考えられた。そこで実験4では、この比較の機会を組織的に変化させ、比較の機会が多いほど電撃の長さの効果は速やか、かつより顕著に現われることを証明した。このような、用いる実験計画の種類によってある変数のもつ効果が異なる事実は条件づけ理論との関係において興味深い。最後に条件性抑制のCSの直前に9種の長さの電撃を提示することによる条件性抑制の脱抑制を見ることによって、異なる長さの電撃の残効に関して実験が行なわれ、脱抑制量はその直前に与えられる電撃の長さの増加関数であることが示され、この事実が相反過程理論との関係で考察された。
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