1.平成3年度補助(03831018)により実施した実験ではcomputer monitor上に速度、加速度、方向の異なる1光点の運動パタンを発生させ、大人に対象自体の「力の関与」、「動きのコントロール」、「生物らしさ」の印象を評定させた。その結果、(1)動きの印象は物理学の初心者の抱く誤信とよく呼応すること、(2)1光点の動きでも対象の生物性が簡単に知れることが示され、日常的な運動力学や日常的な生物学のベースに対象の動きの知覚があることが示唆された。平成4年度は、被験者に異なる二姿勢(正立位・倒立位)をとらせ3年度と同じ刺激の評定を求めた。その結果、倒立姿勢でも刺激の印象は変わらなかった。このことから対象の動きの知覚は、同時に天ー地という地球環境の絶対軸、そして自己の頭-足の位置の知覚を伴っていること、そうした“背景"の知覚があって初めて成立することが示唆された。 2.人や動物の運動パタンは対象の生物性以上の情報を示すと考えられる。平成4年度以降の研究では、運動パタンが対象の意図、プラン、知能について印象とどのように関連するかを明らかにしていく。このために4年度は刺激の作成を行った。すなわち、人間の乳児の身体の動き、特に手足の動きを、生後まもなくから手足が自由に使えるようになる生後10カ月までの期間、定期的に撮影し、それを光点による刺激に加工した。
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