選言文の前件と後件とが両立可能な選言文(例えば、「赤色の箱、または、バナナの入った箱」)を用いて、選言3段論法に関する4つの推論形式に対する反応パターンを、小学2、4、6年生、中学2年生の4学年各学年20名計80名を被験児として、臨床法を用いた発達的調査を実施した。見い出された主要な反応タイプは選言文の論理的解釈(両立的選言解釈)と一致したカード選択を行う〈選言的反応〉、選言文の排他的選言解釈と一致したカード選択を行う〈排他選言的反応〉、推論形式によって連言的選択と選言的選択との混合が見られる〈半選言的反応〉、選言文を連言文のように解釈してカード選択を行ったと思われる〈連言的反応〉、選言文で言及されている前件と後件の内容的結びつきからの連想に基づいて推論する〈連想連言的反応〉であり、各反応タイプの出現率の学年的変化および反応タイプ間の理論的前提関係から、選言3段論法の発達過程は、連想連言的反応→連言的反応→半選言的反応→排他的選言的反応→選言的反応という発達段階を経ることを明らかにした。特に、論理的正答である選言的反応は小学2年生、小学4年生でそれぞれ0%、5%であったのに対し、小学6年生、中学2年生でそれぞれ35%、45%であった。この結果は選言3段論法の問題形式がBraine & Rumain 1981の課題と全く同一であるにもかかわらず、彼らの予測とは違って小学生低中学年で正しく推論できる者はほとんどないことを示している。このことは彼らの実験で5、6歳児にも選言3段論法ができたように見えたのは、彼らの用いた選言文は前件と後件とが両立不可能であり、従って、選言文を連言的に解釈する可能性を予め排除しているたであるとする、われわれの当初からの予測を裏づけるものであった。前年度の選言型4枚カード問題と同様に、選言型3段論法においても、選言型推論が可能となるのは形式的操作期においてであることが示された。
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