研究概要 |
本研究では,社会科学的なアプローチをする際の,理論と応用の乖離を狭めることを主たる目的とし,以下の研究を行なった. 1 共分散構造モデルの下位モデルである同時方程式モデルに関して,1つの識別条件を提案した.この識別条件は,従来提案されている,遂次条件,階数条件,次数条件などと比較して,より柔軟な判断を可能にするものである. 2 同時方程式モデルの1つの一般化最小2乗推定量を提案した.この推定量は,繰返し計算を必要とせず,固定母数や制約母数の推定も可能である.更に推定量の漸近分散を求めることも可能である. 3 確認的因子分析モデルの1つの一般化最小2乗推定量を提案した.この推定量は,繰返し計算を必要とせず,固定母数や制約母数の推定も可能である.調査データを用いて,最尤推定値と従来の一般化最小2乗推定値との比較を行なった結果,この推定量は良い成績をおさめている. 4 共分散構造モデルは,近年,期待値の構造化を可能にし,カテゴリカル変数や上限下限のある変数を分析することが可能になっている.応用研究として,公共事業に対する態度形成の要因分析を行なった. 共分散構造分析は,正しく応用されれば非常に強力な手法である.以上の研究を基礎にして,その普及が図られ,一般の応用研究者が利用し易い明確な限界を示す事が急務であろう.
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