従来の研究結果を基礎に、6歳から12歳までのADHD児、30名を父母に対する十分なインフオームドコンセントを行って、研究計画調書に示した検査を行い、結果を分析した。検査は受動的注意課題、能動的注意課題として多く行われている4種類のRT-task(Reaction time 課題)を行いながら、皮膚電気活動、心電図、呼吸を測定した。結果はADHD児に多く認められるarousal levelの低いタイプは前年度までに検査したADHD児達の比率ほどには高くなく、動機づけを強くすると(以前のテストでは口頭「頑張ってね」と励ますだけであったが、今回は各RT-taskに先だって、「間違わず出来れば褒美をあげる」ことを告げ、その実物を見せてからテストを実施した)arousal levelが向上する例が認められた。注意に影響するarousal levelは外的な条件設定でコントロールできることが示唆された。ADHD児は大きな個人差があって、サブタイプで治療教育が考えられているが、比較的共通しているのはノーマル児より、課題場面で強く、高頻度に情動的変化を想定出来るポリグラフ的反応が起こり、それが課題の成積に影響し、注意の維持に問題を持つことが、行動的な面だけでなく、生理的指標にも現れていた。RSA(Respiratory sinus arrhythmia)リズムの現れ方は副交感機能の相対的な強さを反映するものであるが、この働きが弱い例がADHD児に多いことは前年度までの研究でも見いだしていた。RSAリズムに呼吸以外の要因が多く混入する例がADHD児に多く、ある種の緊張とかプレッシャーのコントロールがノーマルに比べて弱いことが予想されたが、はっきりさせる為には、別の実験が必要である。 ADHD児の言語刺激と物理的刺激に対するreaction timeの差、生理的反応の差はノーマル児と違った結果にはならず、WISC検査のVIQとPIQのdiscrepancyによる差は、今回の研究では分からなかった。
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