研究課題/領域番号 |
04610098
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
松本 和良 創価大学, 文学部, 教授 (20085509)
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研究分担者 |
中野 克彦 創価大学, 大学院文学研究科前期課程在学, 大学院生
大黒 正伸 創価大学, 大学院文学研究科後期課程修了, 大学院修了生
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キーワード | ウタリ社会の伝統文化 / 地域社会の二重構造 / 宗教的行為システム / 宗教の統合的機 / 民族アイデンティティとシンボリズム / 社会関係の制度化 / 北海道ウタリ協会 / アイヌ新法運動 |
研究概要 |
今日のわが国における重要なエスニシティ問題は、アイヌ民族問題である。約百年にわたる北海道開拓事業の進展は、今日、約二万四千人のウタリの人たちの住む各地の地域社会を二重構造化して、気を使う社会を生じさせている。歴史的にみれば、その第一義的問題は、政治的経済的優位にあった民族、すなわち、優位民族が、劣位にあった民族、すなわち、劣位民族を、多年にわたりその社会関係において蔑視し、経済的搾取の対象にしてきたことである。 ウタリの人たちの帰属する地域社会とウタリ社会という二つの社会システムはそれぞれいくつかの統合の焦点を持っている。そこには、宗教の二重性とも言うべき事態が見られる。寺院とイチャルパという二重性である。前者は個別の家の祖先に結びつき、後者はそれを含みながらさらに集合的な民族の記憶に結びつく。そして、前者は地域の同じ壇家集団を介して地域社会に結びつき、後者はウタリ協会を通じて宗教的文化的なウタリ社会を実現させる。宗教の二重性は社会の二重性でもある。 ウタリ社会の伝統的な宗教儀礼と祭への参加が、ウタリ社会統合への重要な機能を有している。ウタリ社会のシステムは、現実の諸要因によって条件づけられながらも、民族を支える象徴体系によって制御され、導かれている。 いまや、ウタリの人たちは、日本国憲法の、その自由と民主主義の理念下で、アイヌ新法運動を実践することにより、即自的民族から対自的民族へと変化しつつある、と言えるのである。
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