昨年の冷夏による不作、外国産の米の輸入など稲作農家とりわけ専業農家にとって平成5年はきわめて困難な年であった。農家にとってこの年をどうのりこえるかが今後の農業経営の行方を決するものであるといっても過言ではない。 稲作農家にとって、規模拡大と農業後継者の確保が今後の農業経営上の不可欠の要因であることはいうまでもない。しかし、この2つの要因の充足は多くの場合つねに問題をはらんでいる。危機的状況にみまわれた今、稲作専業農家からなる農業生産組織はそれぞれの課題の解決のための模索を行なっている。宮城県鹿島台町の山船越水稲・養鶏組合は、冷害の影響をもっとも強くうけた。平年の2割の収量しかえられなかったのである。これは、若手の組合員の農業不安にいっそうの拍車をかけた。現在、山船越水稲組合は集落全体の水田のおよそ70%が組合の管理下に在る。来年度には74%に達する見込みである。数年後には9割に及ぶとみられる。集団的土地利用は比較的順調に行われているようにみえる。しかし、ここでの問題は、それでも組合農家1戸あたりの経営面積が小さいということである。(約5ヘクタール)今後規模拡大を進めるためには近隣の集落の圃場をも管理できる体制を作り出していかなければならない。また、山船越水稲組合では若手のメンバーが補充されず、組合員の平均年齢が上りつつある。組織の内部崩壊を招きかねない状況である。集団的土地利用による規模拡大の問題は組織の後継者問題と直結しているのである。 愛知県安城市の高棚営農組合は、土地の集積の実績がさらにたかまってきた。後継者も既存のメンバー外から補充されるなど、農業生産組織が加入農家の連合体の枠をこえて集落全体の圃場管理の責任主体としての地位を名実ともに獲得しつつあるといってよいだろう。
|