保健婦を事例とすることにより、現代社会におけるプロフェッションの“現存在"とその役割・機能の歴史的変容の動向を明らかにし、プロフェッション論の理論的再構成のために必要な立脚点の構築を図る、という今回の調査研究の課題に即して、理論的検討として、プロフェッション論、地域組織活動論及び援助行動論の検討を行い、並行して、保健婦によるケースワーク及び地域組織活動における役割・機能に関する実態調査を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。1.保健婦によるケースワークは、臨床場面の専門医とは全く対照的に、primaryな性格を有するという点で特徴があること。そして、こうした保健婦のケースワークに特徴的に見られるprimaryな性格は、プロフェッションとしての保健婦の役割・機能全体の核にあるものと考えられ、specialityが重視され、specializationが基本的な動向となっている中で、独自な特性を形成していること。2.保健婦が、機械的に画一化された事業に単なる実施要員として動員されるようになる程、primaryな性格は“縮減"すること。3.地域住民の自主的な保健活動への保健婦の関与は、primaryな性格を“充実"すること。4.一般に、保健婦と住民との間に双方向的な関係が形成される場合、primaryな性格は“充実"し、住民にとって“身近な専門職"としての保健婦の性格が明瞭になること。5.specializationが基本動向となっている中では、保健婦の役割・機能におけるprimaryな性格は、specializationという点で未成熟乃至未形成なものと考えられるが、疾病構造の変化やQOLの重視という保健・医療をめぐって新たに生じている歴史的事態においては、むしろ保健・医療プロフェッションのもう一つのあるべき姿を示唆するものと考えられること。そして、こうしたことは、現代社会におけるプロフェッションの動向を考える場合にも重要な論点になると思われること。
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