研究概要 |
本年度の検討作業の中心は、生活史研究に物語論的諸観点・アイデア・アプローチをどのように組み込んでくるか、という点に焦点を絞る形で行なった。この作業がはっきりとした焦点を結ぶためには、まだもう少し時間が必要なように思うが、さしあたり、生活史データもしくはテクスト検討のために暫定的に設定した4局面と関連づける形で、ぼくが注目に値すると判断している主題群をあげておくと次のようになる。 (1)生活史データ特質検討局面- (a)意味のポテンシャル(meaning potential)論〔部分的に、意識変容論ならびに歴史記述論の分野での議論とも関連あり〕。 (2)生活史データ産出局面- (b)生活史インタビユー状況論。 (3)生活史テクスト産出局面- (c)生活史記述論、(d)生活史テクスト構成論〔(c),(d)の主題は、歴史記述論と密接な関連を持つ〕。 (4)生活史データもしくはテクスト分析・解釈局面- (e)自己に関わる物語(self-related narrative)論〔自伝的記憶とアイデンティティ論の分野での議論とも関連あり〕、(f)登場人物あぶり出し(implied character)論。 なお、(3)ならびに(4)の局面を検討する前段の作業として、(g)データのフレームづけ(framing)論、(h)生活史データもしくはテクストのタイプわけ論、(i)生活史データ絞り込み論、がある。
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